伊藤骨形態計測研究所
業務内容


 非脱灰骨標本作製

 採取した骨部位に応じてそれぞれ適切かつ正確な非脱灰骨標本を作製します。

 どの部位にしたらいいかわからない場合には、まず相談してください。目的にあった解析部位の選択を一緒に考えましょう。一般に、RAやOAの実験でしたら、膝関節を温存した脛骨の前額面か、足関節の矢状面の薄切切片が適しています。また、Opの薬剤投与でしたら、まず脛骨で予備実験を行い、腰椎矢状面で本試験を開始することを薦めます。たとえば遺伝子の実験では、一般的に脛骨で解析しています。

 骨を薄くする方法は二つあり、薄切と研磨です。腰椎、脛骨、大腿骨近位など海綿骨が多い骨は薄切。カルバリア、大腿骨近位、中央、脛骨中央など皮質骨が多い場合は研磨します。マウスではL1~L5までの連続した矢状面の薄切切片を作成します。
 骨部位と標本作製方法については以下の方法によります。

骨部位  標本作製方法   標本方向 
頭蓋冠 研磨 前額面
上腕 薄切 矢状断
腰椎 薄切 矢状断
大腿骨近位 研磨 矢状断
大腿骨中央 研磨 横断
大腿骨遠位 薄切 前額面
脛骨膝温存 薄切 前額面
脛骨近位 薄切 前額面
脛骨中央 研磨 横断
脛骨遠位 薄切 矢状断
 足関節温存脛骨遠位  薄切 矢状断

Page Top ▲

固定法(アルコール固定です。)

①屠殺後、解剖の際に軟部組織をある程度残して除去して下さい。
  ※骨表面を露出させない程度でお願いいたします。
  (カルバリアの場合、頭皮は剥がさないで下さい。)
②解剖後直ちに検体をたっぷりめの70%エタノールで固定し、冷暗所で保存
  して下さい。
 (固定液浸透のために割面を入れたり切断したりする必要はありません。
  そのままで十分固定されます。)
③70%エタノールは屠殺当日・翌日・翌々日の3日間は毎日新しいものに
 交換して下さい。※
 4日後以降は交換する必要はありませんが、たっぷりめの70%エタノールに
 浸し、冷暗所に保存して下さい。
④送付時は、コニカルチューブなどに60%未満エタノールをたっぷりと入れ、蓋を
 閉めた上から、アルミホイルなどで遮光して下さい。
 (下肢の場合は伸展して入れてください)
⑤急な温度変化は細胞に悪影響を及ぼしますので、冷蔵便でお送り下さい
 (冷凍は不可)アルコール固定です。

 ここで特殊なのは、脱灰しないでそのまま標本作製することです。通常、病理では、ホルマリンに固定しますが、ホルマリンは、脱灰作用があるので、肝心な類骨や標識が溶けて見えなくなります。固定した期間にもよりますが、すぐ取り出せば大丈夫です。しかしいったんホルマリンに入れてしまったものは、どうしても染色性が悪くなります。一番お勧めなのは、sacrifice後、すぐに片側下肢をホルマリン、もう片側をアルコール固定し、それぞれ別の染色を行うことです。
ホルマリン固定で、TRAP染色、HE染色などができます。
骨採取後、ホルマリンなどの脱灰溶液に浸漬された検体や骨質が脆弱な検体の場合、MMA樹脂の重合時膨張圧力に耐えられず、標本の骨組織に割れた状況が認められる場合がございます。


Page Top ▲

 染色法

 骨に色をつけるのは、Villanueva bone stainという染色法を用います。

 この染色は優れた染色で、顕微鏡下、自然光、蛍光、偏光の3つの見方で全く異なる、骨の性質を見ることが出来ます。主に自然光では細胞、偏光では、層板か線維性かの骨質や、セメントラインから判定するminimodelingかremodelingかを見ます。蛍光では標識を見ます。自然光では全体的に赤紫色です。よく見ると、骨の柔らかい部分が濃く染まっていることがわかります。染色液の浸透性がいいからです。類骨は骨の基質になる部分で、柔らかいため、赤く見えます。また成長軟骨、関節軟骨、椎間板も赤紫が濃く染まって見えます。



Page Top ▲